• 産経新聞「直球&曲球」に掲載された会長 葛城奈海コラム

産経新聞 「直球&曲球」(平成30年度)


30/ 3/ 29 「北」の漂着船の展示を望む

 砂浜に打ち上げられた木造船は波が寄せるごとに、かろうじてつながっている船の横っ腹が開き、また 閉じという異様な光景を繰り返していた。金沢市安原海岸に1月10日に漂着したこの船からは、7遺体が発見されている。

 日本海側への北朝鮮船の漂着が相次いでいる。海上保安庁によると、朝鮮半島からの漂着・漂流は平成26年65件▽27年45件▽28年66件と推移したが、29年は過去最多の104件となり、内45件が12月に集中。「冬季漁獲戦闘」の名の下に、荒れる日本海へ出漁し、命を落とした漁民たちには哀悼の意をささげたい。

 今月2日、特定失踪者問題調査会(荒木和博代表)による石川県特別検証に同行、救う会石川の大口英夫事務局長の案内で3市町を回り、5隻の漂着船を検証した。

 いずれも平底の木造船で、もっとも小さなものは、志賀町西海の岩がちな浜に打ち上げられた長さ約5・6メートルの船。手漕(こ)ぎボートを僅かに大きくした程度で、これで本当に冬の日本海に出たのかと疑念が湧く。最も大きかったのは加賀市美岬町の波消しブロックに漂着した長さ約18メートルの船で、甲板以下はほぼ完全な姿、船倉には救命胴衣も残存していた。遺体はなかったというが、気付かれないうちに乗員が上陸した疑いも拭い去れない。事実、秋田県由利本荘市では昨秋、乗員8人のうちの2人が付近の住宅のインターホンを鳴らしたことにより漂着が発覚している。

 海保によると、昨年の漂着・漂流船のうち遺体確認は35体、生存者は42人。だが、これ以外に生存者がいなかったと断言できるだろうか。工作員であれば助けを求めることもあるまい。地域住民たちは不安を抱きながら、その危機感が全国的に共有されないことにさらなる不安を募らせている。
 また、生存者は貴重な情報源だ。摩擦を恐れ早期に帰国させるのではなく腰を据えて拉致被害者情報はじめ北の生情報を収集すべきである。
 漂着船は、捜査が終わり次第、自治体が環境省の予算で処分することになっている。が、百聞は一見にしかず。ひたひたと迫る危機を少しでも実感するためにも、漂着船の東京、大阪などでの展示を望む。

*産経新聞【直球&曲球】より

          


30/ 3/ 1 手柄も失敗も肉も皆で分かち合う

 「東京でも野生の鹿や猪(いのしし)が食べられる」と聞けば、意外に思う人も少なくないだろう。激増した鹿による森林被害を食い止めたいと、3年前に狩猟免許を取得した。昨年末に念願だった銃砲所持許可を得て、この2月、ハンターとして初出猟を果たした。

 朝暗いうちに家を出て、向かったのは東京都檜原(ひのはら)村。犬を使った伝統的な巻狩(まきがり)を行う檜原大物クラブ(平野公一代表)の猟に参加させていただいた。狩猟への理解促進と後継者育成を図ろうと数年前から村外のハンターや見学者も積極的に受け入れている同クラブは、猟歴半世紀以上の大ベテランから「狩りガール」までが集う、活気あふれる猟友会だ。まずは参加者十数人が一堂に会して持ち場を決め、それぞれ「タツマ」と呼ばれる配置につく。初心者の私もいきなりひとりタツマに配され、緊張しつつも、照準の練習などをしながら獲物を待つ。静寂に包まれた雪の杉木立に、時折リスだけが元気に動き回っている。
 と、視界の片隅に動くものが…雄鹿だ! てっきり獲物が出てくる前には犬が鳴くとばかり思っていたので油断していた。銃を構え安全装置を外して…とモタモタやっているうちに、鹿は姿を消した。後刻、先輩方から「タツマに立ったら決して気を抜いてはいけない」とご指南を受ける。この日を含め3回出猟したが、私が獲物を見たのはこのときだけ。貴重なチャンスを逃したという自覚は回を重ねるごとに深まった。

 撃ち損じても、解体した肉の分け前にはあずかることができる。目分量ながら分けっぷりの均等さには驚いた。なんでもこれが「山分け」の語源とか。それだけおのおのが等しく責任を負っているということなのだろう。メンバー最若手の平野佑樹さん(29)は「みんなに撃たせてもらっている」と話した。手柄も失敗も肉も皆で分かち合う。獲物の心臓の一部は山の神への感謝の印として小枝に刺してささげる。「クラブハウス」で猪や鹿料理の数々に舌鼓を打ちながら、いつしかそんな村落共同体の原風景を見るような檜原大物クラブそのものにも魅せられていた。

*産経新聞【直球&曲球】より

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30/ 2/ 1 「首相が特殊作戦群を視察」に快哉

 1月19日付本紙東京版で「日豪、防衛協定で協議 両首脳『極秘』特殊作戦群を視察」との見出しに触れ、私はひとり快哉を叫んだ。これまで「自衛隊による拉致被害者救出」を訴えてきたが、仮にそれが実現するとしたら、任にあたるであろう特殊作戦群の存在と実力を最高指揮官である首相が知らずして、命令を下せるはずがない。そう思い、かねて切望していた首相による同群視察が実現したのだ。
 このように考えるようになったきっかけは、特殊作戦群初代群長を務めた荒谷卓氏から、ある国では特殊部隊の訓練を首相自ら人質役になり体感すると聞いたことによる。多少の負傷も厭わず首相が直接、部隊の実力と隊員たちの士気に触れることで、命がけの任務を付与する側とされる側の信頼関係も醸成される。この日の動静によれば、豪首相を見送った後、首相は再び同群の訓練を視察している。熱心に部隊を知ろうとした証左であろう。
 拉致問題を「最優先課題。全力で取り組む」というのであれば、自衛隊の活用を選択肢に入れるべきだ。横田めぐみさんの拉致から昨年で40年。被害者ご家族の訃報も相次いでいる。これ以上、どう待てというのだ。法の制約があるというならば、国民を守れない法など変えるべきであろう。超法規的措置という手段もある。情報がないのに無理だという人もいるが、明確な目的があればこそ、人も国も真剣に情報を集めるものだ。国は、日本海側に相次ぐ漂着船の乗員や、日本に200〜250人はいると言われる脱北者から真摯に情報を収集しているか。していないとすれば、それこそ「本気ではない」証しではないか。

 予備役ブルーリボンの会(荒木和博代表)では、「拉致被害者救出への自衛隊の活用を求める」元自衛隊員らの署名を集めることを決めた。情報収集から保護、輸送まで自衛隊のできることは様々ある。そもそも何のために存在する自衛隊か。「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、わが国を防衛する」原点に立ち返り、関係者自ら国を動かす原動力となることを切に願う。


*産経新聞【直球&曲球】より

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30/ 1/ 4 いかに大御心に添うか 真摯に応える年

 「伝統あるこの国を守ることができる幸せを感じています」。年末の会合で知人の発した言葉が琴線に触れた。同胞が40年も拉致され続けているのに“平和”を謳歌する日本。「この国を守れていないふがいなさ」にばかり目が向いてしまう私には新鮮な視点であり、それでいて、なにか深いところに響いた。
 私たちが守りたいと思う「伝統あるこの国」とは何か。どんな時代にも変わらず日本の歴史を貫いてきたのは、国安かれ民安かれという天皇陛下の祈りに国民が包まれて続けてきたことだろう。権力をもって支配するのではなく、国の様や民の心をお知りになろうと努める天皇陛下にとって国民は「大御宝」、つまり我が子のような存在だ。
 歴代天皇は、大地震など天変地異があれば、自身の「不徳の致すところ」とし、元旦の儀式として宮中で行う四方拝では、「盗賊、毒、危難、害などあらゆる禍が国民に降りかからずわが身を通過しますように…」と祈られている。その恩は私たち国民ひとりひとりに降り注いでいる。民は陛下と一体となり、その大御心を体する国民たらんと務める。それが日本の国柄であろう。だからこそ、「守ることに幸せを感じ」られるのではないか。
 5人の拉致被害者が帰国した平成14年、お誕生日に際し皇后陛下はこう述べられた。
 「小泉総理の北朝鮮訪問により、一連の拉致事件に関し、初めて真相の一部が報道され、驚きと悲しみとともに、無念さを覚えます。なぜ私たち皆が、自分たち共同社会の出来事として、この人々の不在をもっと強く意識続けることができなかったかとの思いを消すことができません。今回帰ることのできなかった人々の家族の気持ちは察するにあまりあり、そのひとしおの淋しさを思います」。
 あれから15年が過ぎた。北朝鮮の地にいて、いまだ帰国を果たせない被害者を誰よりも案じ、一日千秋の思いで待ちわびる家族の思いにもっとも寄り添い続けてこられたのは、他ならぬ天皇、皇后両陛下なのではないか。

 いかに大御心に添うか、われわれ国民が真摯に応える年にしたい。


*産経新聞【直球&曲球】より

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